
日本の方言は多種多様にある
方言はどのように分けられているのでしょうか。方言の種類の数え方や分布パターンについて紹介していきます。
日本にある方言はどれくらい?
方言は都道府県などの地域ごとだけでなく、山や川などの自然を境にして分かれていることもあるため厳密に「どこで」「どう」分けられているのかを判断することはできません。方言の種類を数えるのに最適とされているのは、1953年に東条操が発表した方言区画案です。この区画案は文法や音声上の特徴をもとにして方言を区分しているもので、これによると日本の方言は「本土方言」と「琉球方言」の二つに分けることができるとされています。そこからさらに「東部方言」「西部方言」「九州方言」「琉球方言」の4つに分類され、最終的には16種類になります。
方言の分布パターン
方言の分け方にはさまざまなパターンがあります。東部方言と西部方言が対立している「東西対決」は中部地方に境界線があるパターンです。語彙で比較してみると「居る」というひとつの言葉も東では「いる」ですが西では「おる」し、「買った」は東では「かった」ですが西では「こーた」とそれぞれ異なっています。
文化の違いによって分けられているのが「方言周圏分布」パターンです。これは柳田国男が蝸牛考で唱えた方言周圏論に基づいたものです。文化の中心であった都、つまり京阪神から円心円状に語形が広がっているとされています。これは語彙の違いを調査しているもので、同じ言葉でも京阪神から離れるほど古い言葉になっていることが分かりました。
同じ地域内で方言が違うのに離れた地域と方言が同じなのが「交互分布」パターンです。数を聞くときに東北や関西では「なんぼ?」と聞きますが、東京や九州では「いくつ?」と聞きます。
分布に法則性がないもの、メダカの名前や学校の組分けじゃんけんなどが「複雑分布」のパターンです。特にメダカは有名で全国で約4600種類もあるといわれています。この複雑分布に分類される方言は子どもの遊びに関わるものが多くなっています。学校の組分けじゃんけんひとつとっても、関東ならスタンダードな「グーパーじゃんけん」ですが、関西は「グッパでホイ」、九州は「グーとパーで別れましょ」と多岐に渡っています。
複雑分布に対して、日本各地で差がない、全国のどこにいっても同じようなものが使われているのが「全国共通分布」パターンです。「雨」という言葉を思い浮かべてください。どこの地域でも「あめ」という言葉を使っているはずです。沖縄の一部では「あみ」と使うとこもあるようですが、「雨」は全国どこに行っても「あめ」です。
「○○弁」や「○○訛り」
方言は「○○弁」や「○○訛り」でも分けることができます。「○○弁」といわれてすぐに思い浮かぶのは関西弁や東北弁でしょうか。独特のイントネーションやアクセントがある言葉なのですぐに分かりますよね。ですが、一言で関西弁といっても大阪府の北摂地区と兵庫県の阪神地区で使われている「摂津弁」や大阪の東部、河内地方で使われている「河内弁」、大阪府の南部で使われている「泉州弁」に分けられており、さらに泉州弁は「酒井弁」「泉北弁」「泉南弁」に細かく分類されています。また、淡路市島で使われている「淡路弁」や京都独特の方言である「京ことば」、兵庫県の播磨地方の「播磨弁」などもあり、全部でいくつに分類できるかを正確に把握することはできません。そのため、東条操が発表した言語区画案に基づいて、「16種類」と分類しているようです。
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