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震災をきっかけにスタートした方言サポート

震災をきっかけにスタートした方言サポート

東日本大震災で明らかになった方言問題がきっかけとなって、医療従事者に向けたサポートや教育がすすめられています。ここでは実際に行われている方言サポートをいくつか紹介していきます。

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方言の理解は患者さんとの意思疎通に欠かせない

方言はある特定の地域でしか通じないため理解できず誤解を生んでしまい、医療ミスなどのインシデントが起こる可能性があります。実際に、医療チームが患者さんの言葉を違う意味に解釈してしまったこともあったのだとか。患者さんが自分の状態を「ボンノゴカラ ヘナが イデ」と説明したところ、支援チームが「お盆のころから背中が痛い」という意味に解釈してしまったそうです。この言葉は「頭の後ろの下側にあるくぼんだ所から背中が痛い」という意味ですが、痛みの部分が全然違っているため間違った解釈のまますすめていたら医療ミスを引き起こしてしまう可能性もありました。
患者さんは自分の状態を正確に伝えるために使い慣れている方言を使う傾向がありますが、人は知らない言葉は自分が知っている言葉に近づけて書き換えてしまうため、方言に慣れていない支援チームが違う意味に解釈してしまっても仕方がないことかもしれません。ですが、この解釈の違いが大きなインシデントやアクシデントにつながってしまうこともあるので、「分からない」で済ますことはできません。
東日本大震災で起こったコミュニケーションの不良さを踏まえて、医療従事者に向けて方言を理解するサポートとしていろいろな取り組みが行われています。

【東北方言オノマトペ用例集】

国立国語研究所では2011年度末に医療従事者に向けて、【東北方言オノマトペ用例集】という冊子を作成しました。これは青森・岩手・宮城・福島の体調や気分を表す方言を集めたもので、岩手・宮城・福島の医療機関や公立図書館に配布されています。

東北の方言の手引きともいえる冊子で、試作版にさまざまな意見を反映させながら内容を改訂し完成したのは2012年3月です。方言の手引きだけでなく医療に関わる人や遠くに避難した人、復興に取り組む人などの応援も目指している一冊です。

東北方言オノマトペ用例集の詳細はこちら

東北方言オノマトペ用例集詳細

オノマトペの例

オノマトペとは擬音語や擬態語のことで体調や気分を表す言葉がたくさんあります。たとえば痛みを表すオノマトペは共通語なら「シクシク」や「ズキズキ」「キリキリ」などですが、東北方言では全然違います。するどく刺すような痛みは「いかいか」、悪寒がするときは「ざきっ」、腹部や胸部が不快なときは「どもっ」、動悸で苦しいときは「はかはか」など、聞き慣れていない人にすれば意味が分からないものばかりです。

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